骨のある意見の抜粋
本当に問われているのは、真面目に額に汗して働いて、財やサービスを創造して価値を生み出す自分の仕事に誇りを持つことが出来て、それでいて何も華美なことを求めるのでもなく、手作りの料理を囲んでの家族との団欒、1杯の安酒とゆったりした風呂、園芸か山歩きかゴルフか何か1つのホビーの楽しみしか必要としていない、慎ましい「労働者」の存在こそが資本主義の命だというのに、そういう人々を馬鹿にする資本主義になってしまったということである。
クリントンは、馬鹿にする側だから、それに対する答えを提示することが出来なかった。トランプは、彼らを馬鹿にしなかったのは偉かったけれども、間違った解決策しか提示しておらず、従って米国は自爆的な硬着陸に行き着かざるを得ない。
いや、私も、トランプが実際に大統領になれば、多少とも現実的な路線を取るだろうとは思っている。しかしかれの思考の核の部分に、長年に渡って培われた徹底的な日本嫌いが潜んでいることを軽視すれば、日本は酷い目に遭うことになるだろう。
著者/高野孟(ジャーナリスト)
トランプ政権が、「もっと金を出さないと米軍は撤退する」と言うなら、「結構なお話ですな」と応じるべきだ。もしそうなれば沖縄の基地問題は解消し、約6千億円の米軍関係経費の支出もなくなる。
北朝鮮の核・ミサイル開発は、第2次朝鮮戦争がもし起こった際、もっぱら韓国軍、米軍の基地を狙うためと見られ、米軍が日本から去れば、限られた数の核弾頭を日本に向けて使う意味はなくなる。
現実には、米国が世界的制海権を保持するために不可欠な横須賀、佐世保両港や岩国の海軍航空基地などを放棄することは考えがたい。真珠湾も艦船の修理能力は乏しいからだ。
日本が「退去するならどうぞ」と言えば、相手は「ぜひ置いてほしい」と下手に出るしかない。
もしトランプ氏が「退去するぞ」と脅すならば、それは日本が「トランプ」(切り札)を握る好機となる。
だが、外務省や安倍首相にその度胸があるかは疑わしい。
寄稿/田岡俊次氏
続き
米スタンフォード大学アジア太平洋研究センター副主幹ダン・スナイダー教授も同意見で、『東洋経済オンライン』11日付で、トランプの勝利は「単に民主党の大敗とか、その一部に共和党員も含む政治的エスタブリッシュメントの大敗とかを意味するのではない。
もっと衝撃的なことに、同氏の当選により、冷戦以降2大政党共通の外交政策の柱となってきた、介入による国際協調主義が明確に否定されたということだ」と述べ、それが日米関係にどのようなインパクトを与えることになるのか慎重に見極めるべきだと指摘している。
また、トランプが意見広告を出して「日本人は意図的な円安で得た金でマンハッタンのビルを買い漁っている」ことを非難した80年代から、彼の考えが全く変わっていないことに注意を促し、まだ政権以降の準備も本格化していないこの段階で安倍が慌てて会いに行くのは「果たしてよいアイデアかどうか」と疑問を投げかけている。
カレル・ヴァン・ウォルフレン氏「安倍首相は絵空事だらけ」
2014年11月17日バックナンバー
「安倍首相の考えはファンタジーレベル」/(C)日刊ゲンダイ
――最後にお聞きしますが、安倍首相をリーダーとして、また人間としてどう見ていますか。
日本がどうあるべきか、という漠然とした考え方はあると思いますが、ファンタジーのレベルでしかない絵空事を抱いている。つまり、幻想の中で生きている首相だということです。まったく現実的な政治家ではありません。(インタビュアー・堀田佳男)
▽1941年オランダ生まれ。72年からオランダ紙の東アジア特派員を務め、82~83年に日本外国特派員協会会長。30年以上、日本政治を冷静に分析してきた。「日本/権力構造の謎」「いまだ人間を幸福にしない日本というシステム」はベストセラー。アムステルダム大名誉教授。
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