種子の発芽の成長の仕組み
これまで、光合成から葉の成長、種子の保存まで学びましたので、今度は米の種子から発芽成長までの過程をたどります。
種子を水につけて、累積温度約100℃日(30℃の水に浸けて3日)すると、発芽をしてきます。
乾燥保存されていた種子の胚芽は、水によって膨らみ、ただちに活動を始めます。
胚乳のβデンプンは水を含んでαデンプンとなって、消化酵素の働きによって糖化して、ブドウ糖になるのです。
そして、ブドウ糖は転移酵素に取り込まれて、官能基を転移されてセルロース体の生物=芽となるのです。
この時、転移酵素のエネルギーとして酸素が必要です。
稲の種子は水中で発芽すると、根は水がふんだんにあるので発達せずに、胚乳の栄養だけで2.5葉まで育つことができます。
水環境を絶たれた苗箱の育苗では、芽より先に根が出て根から水を確保して、2.5葉を超えて成長します。
発芽後は、毎日水をくれて発育を促します。
胚乳がブドウ糖を供給するので、光合成の式の右の成分の内、C6H12O6+6H2Oが満足しますが、当初6O2は種子からは供給されないので、バランスを欠くことになります。
実務では、苗箱1枚当たり、窒素1gの肥料を用意します。液肥であったり腐植であったりします。
この苗箱の窒素と、式の6O2の酸素との関係は、どのように等価にすればよいのかを悩みました。
私は、こんな仮説を立てました。
水に溶ける空気の窒素と酸素の比は?窒素は活性が低いので、酸素の半分しか溶けないので、水中の窒素酸素の比は、1.98:1だと、読んだことがあります。
それによれば、窒素を強制的に溶かせば、その半分の酸素は空中から水に溶ける。つまり酸素を供給しないでも、窒素肥料を溶かせば、酸素は自然に溶け、水に溶けた酸素があれば、酵素活性に使えるようになる。風が吹けばの理論で、「窒素を溶かせば酸素が増える」「酸素が増えると酵素が活性化する」「酵素が活性化すれば成長が早まる」との説が、実用的だと思っています。
このことは、窒素肥料の正当化にも当てはまります。稲に窒素肥料(=亜硝酸又はアンモニア)をくれると、葉はたちどころに青くなります。
どういうことか?赤のヒカリは全部吸収したが、青の光は全部使わなくても良くなったことを意味していて、緑と青の半分が反射している状態で、青緑の葉に見えるのです。
酸素の供給を増やすと、転移酵素の働きが活性化されて、成長が促進される。のだと考えています。
このことは、日本酒の醸造に於いても、似たような経緯をたどります。
似ているといえば、日本酒の仕込みの最初に、亜硝酸を加え、沸かせるのだそうです。
窒素を加えて、酸素濃度を高め、発酵を促しているのだと思います。
そんなことから、植物の成長に関する窒素の役目が見えてきました。
私は、酵素の活性を高める工夫をすれば、農業でも醸造でも、化学薬品を使わないでできると信じています。
因みに、米作りでは化学物質を田んぼから根絶することで、無農薬栽培が実現しました。
また、宮下米のお酒は、亜硝酸を投入しなくてもはじめからガンガン湧いてきたそうです。ですから、二日酔いがしない酒ができるのです。